ひとつの「ことば」が使われなくなることは、その「ことば」のもっている精神(こころ)が、亡ぶということである。
ある言語学者のことばより
田中耕一さんのノーベル賞受賞のきっかけとなったのは、実験中の試料を、とりちがえたことにはじまるという。それを「しまった」と捨ててしまわずに、「もったいない」ととっておいたのが、ノーベル賞につながる新発見となった。
後日談によると、授賞式での記念講演で、この「もったいない」をどう表現するか、一番こまったといわれる。英語には「もったいない」にあてはまることばがないからである。
ひるがえって考えてみると、私たちの先輩は、米粒をこぼしてはもったいない。紙1枚を反故にしてはもったいないと、日常よく使ったものである。それが、大量生産、大量消費のバブルの中で、精神までも大量に破壊されたのであろうか。衝動買いしてはすぐに飽き、目移りばかりしていては、それこそもったいないではないか。
ことばは時とともにうつりかわるものではあるが、「もったいない」を死語にしてしまっては、先人たちに申し訳ない。