出典:新聞歌壇「母艦がない母艦がない」と言いつづけミッドウェイの兵 平成に死す
「母艦」とは、航空母艦のことである。「ミッドウェイの兵」とはミッドウェイ海戦に参加したパイロットのことである。
アメリカとの戦争は、昭和十六年十二月八日のハワイ真珠湾攻撃に始まり、ミッドウェイ戦があったのは、その半年後の十七年六月五日である。日本海軍はこの海戦で大敗北をうけ、以後日本は崩壊の坂をころげおちることになる。死力をつくして戦い、母艦に還ろうとしたら、還るべき母艦はすでに沈められてないのである。『母艦がない』はまさに恐怖と絶望の叫びなのだ。しかも、そのパイロットは奇跡的に生きて還り、『平成』の今まで半世紀の間生きつづけた。その死に際してのうわごとに、五十年以上も前の叫びがよみがえって、母艦がないと言いつづけたとは、なんとも痛ましい。
でも、もしかしたら、私たちも、還るべきいのちの母を、見失っているかもしれぬ。残酷で悲しいことが今もつづいている今年の暮れに、親鸞さまにみちびいていただこう。報恩講はそのつどいなのです。