出典:蓮如上人御一代聞書勧修寺村の道徳
明応2年(1492)正月一日に御前へまいりたるに蓮如上人仰せられ候。
「道徳はいくつになるぞ、道徳念仏申さるべし」と…。
京都の郊外・山科本願寺におられた蓮如上人(1415〜1499)と、道徳が住んでいた勧修寺村は、さほど離れたところではなかった。生涯上人をしたっていた道徳にとって、毎日本願寺にもうでて上人から親しく仏法を聞くことは、何にもかえがたい慶びであった。
「道徳はいくつになるぞ」は、明応二年の正月一日、元旦のご挨拶に参った折に上人から問いかけられたことばである。「道徳は」と、名指しで真正面からじっと見つめての問いであった。
「いくつになるぞ」とは、新年をむかえ歳をかさねるということが、何を意味するのか人生の一番かなめのところを押さえて、いよいよ「生死の一大事」を急ぐべきをあらためて指摘されたのである。これは道徳一人にかぎったことではない。私へのご催促なのである。
「念仏申さるべし」とは、いくたびも戦乱のなかをかいくぐり、なにもかもが灰じんと化して行く中で、これ(念仏)があったればこそ生きてもこれた、また死んでもゆけるよろこびを、道徳よ共にたたえようとよびかけて下さっているようである。